ヨハネ4:14「いのちの水を豊かに！」
koinonia2023年1月1日（日） 新年礼拝 メッセージ
聖書 エゼキエル47章12節、ヨハネ4章14節
説教 「いのちの水を豊かに！」
メッセージ 堀部 里子 牧師
【今週の聖書箇所】
「川のかたわら、その岸のこなたかなたに、食物となる各種の木が育つ。その葉は枯れず、その実は絶えず、月ごとに新しい実がなる。これはその水が聖所から流れ出るからである。その実は食用に供せられ、その葉は薬となる。」
エゼキエル47:12
「しかし、わたしが与える水を飲む者は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命に至る水が、わきあがるであろう。」
ヨハネ4:14
新年明けましておめでとうございます。2021年の元旦にピリピ3:13‐14からメッセージをしたのがつい先日のような思いがします。「兄弟たちよ。わたしはすでに捕えたとは思っていない。ただこの一事を努めている。すなわち、後のものを忘れ、前のものに向かってからだを伸ばしつつ、目標を目ざして走り、キリスト・イエスにおいて上に召して下さる神の賞与を得ようと努めているのである。」（ピリピ3:13‐14）今年もどうぞ主に在って宜しくお願いいたします。
今年も主が新しいことを成そうとされておられます。その波に乗って共に進んで参りましょう。神様は皆さん一人ひとりの置かれておられる状況を良くご存じです。年頭に私たちが心新たに、目標を定めたり、生活習慣を見直そうと決心したり、大切な時として覚えていることもご存じです。どうぞ主の言葉を全てに先立たせ、信仰を働かせてお進みになりますように。
【イスラエル水事情】
さて、今朝は教会の今年の標語の御言葉は旧約と新約より一ヶ所ずつです。二つの御言葉の共通点・キーワードは何でしょうか。
それは「水」です。「マイムマイム」という曲をご存じだと思いますが、日本ではフォークダンスの曲として有名ですが、実はヘブライ語の歌で、「マイム」とは、「水」という意味です。以前、イスラエルのために祈る祈祷会で「マイムマイム」を歌った時にその意味を知りました。イザヤ１２:３「あなたがたは喜びをもって、救の井戸から水をくむ。」の歌詞が繰り返され、「♪水、水、水、水、喜びをもって♪」と歌っています。仮庵の祭りの時に、エルサレムのシロアムの池から水を汲んで、その水がエルサレム神殿に運ばれ、聖所に水を注ぐ時に歌い踊るそうですが、現在もそうでしょうか。
イスラエルや中東地域の国々にとって水はとても貴重なもので、特にイスラエルは世界中のどの国よりも一滴の水からそれ以上を絞り出すことを研究しているそうです。荒野が砂漠が多い土地で、一昔前までは世界で最も水の乏しい国の一つで水不足に悩まされていましたが、近年国を挙げて灌漑事業に取り組み、水の再利用や海水を淡水化する新しい技術やシステムを研究・開発し、瞬く間に水の国となりました。ネゲブ地方、ヨルダン峡谷、荒野に花が咲き、土地が回復しました。イスラエルに行った時、色とりどりのフルーツや野菜が売られていて、イスラエルの土地が肥沃なのだと感じたことを覚えています。
水が空のコップに注がれ、どんどん水が満ちていっぱいになると、次は溢れます。そしてコップの外に流れ出して行きます。イスラエルの土地は乾ききっていましたが、水で外交ができるほどに水が土地を潤し、実り多く生み出すようになるにはプロセスがありました。それはイスラエルの国が、「自分たちの国・土地は渇いている。水不足だ。」と認識したことから始まりました。私たちの体も水分を小まめに必要とします。しかし心と魂の渇きに対してはそれほど敏感でないことがあるのではないでしょうか。
【神殿から水が流れる】
まずエゼキエル書から見て行きたいと思います。
エゼキエル１:３に、「主の言葉がケバル川のほとり、カルデヤびとの地でブジの子祭司エゼキエルに臨み、主の手がその所で彼の上にあった。」とあります。祭司エゼキエルは捕囚となりバビロンの地へと連れて行かれていました。イスラエルの民は、神様から心が離れ、自分たちの罪の故に、外国に住まわせられ、その地で生きてゆかねばなりませんでした。イスラエルの民の心と魂は飢え渇いていました。神様に「助けてくれ」と祈り求めたと思います。私たちは良い事も悪いことも、自分で蒔いた種を刈り取らないといけないのです。
エルサレム陥落から１４年後、神様はエゼキエルに新しいエルサレムの神殿の幻を見せられます。主の御手（御使い）がエゼキエルを新しい神殿の中に招き入れました。４０章からその詳細が記されています。エゼキエルはエルサレム陥落５年前に主の栄光が神殿から離れ去るのを見ていました（10:18－19、11:23）。しかし、後に東の方から主の栄光が神殿に満ちるのを見たのです（43:2－5）。主の栄光が戻って来ました。エゼキエルは主の使いに案内されて、神殿の外側から内側の細部に至るまで見学させられます。
エゼキエルに見せられた神殿は、イスラエルの民が捕囚の地から約束の地に帰還した時に建てるべき神殿の設計図でした。４７章を見ると、エルサレム神殿がエデンの園のようになり、終わりの時代にはその神殿こそ世界の祝福の源となることが示唆されています。御使いはエゼキエルを外庭の東の門の外に連れ出しました。そしてそこから流れる川の深さを量らせました。１千キュビト（約５００Ｍ）ごとに流れは深くなって、４千キュビト（約２キロ）くだったところで水かさは増し、泳げるほどの水となって渡ることができない川となっていました。つまり、エルサレム神殿がユーフラテス川のような大河の源となりました。この川の水がヨルダン渓谷に流れ込んで、死海の水が魚が住めるような水に変えるということです。
「川のかたわら、その岸のこなたかなたに、食物となる各種の木が育つ。その葉は枯れず、その実は絶えず、月ごとに新しい実がなる。これはその水が聖所から流れ出るからである。その実は食用に供せられ、その葉は薬となる。」
エゼキエル47:12
【主イエスの与える水】
エゼキエル書には、枯れた骨が生き返る幻もでてきます。神殿から水が出るとか枯れた骨が生き返るなど通常ではありえないことです。しかし、ありえないことがイエス様の十字架の死と復活です。私たちの今、見ているものには見える限界があります。いつかは年と共に、見える力も衰えてくるでしょう。しかし、年をとっても、霊的な目、信仰の目は益々さやかにみえてくる道を選択することも可能です。
イエス様は「しかし、わたしが与える水を飲む者は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが与える水は、その人のうちで泉となり、永遠の命に至る水が、わきあがるであろう。」（ヨハネ4:14）とおっしゃいました。
ヨハネ７:37でもこう大声でおっしゃっています。「祭の終りの大事な日に、イエスは立って、叫んで言われた、『だれでもかわく者は、わたしのところにきて飲むがよい。わたしを信じる者は、聖書に書いてあるとおり、その腹から生ける水が川となって流れ出るであろう。』」と。
条件はただ一つ、渇いていることです。その渇いている人がイエス様のところに行って水を飲むことで渇きが満たされ、その人の心の奥底から泉のように生ける水の川が流れ出るようになると約束されています。これはイエス様を信じる全ての者に聖霊が与えられ、その人の身体自体が神殿（神の宮）とされ、周りの人々を祝福する泉となるのだということを意味しているのです。
【空洞・渇き～満たされること】
フランスの哲学者パスカルは次のように言いました。「すべての人間の心の中には、神が造られた空洞がある」と。この空洞は神の形の穴であり、神様からくるもので満たされる必要があります。しかし人間は神以外のもので一生懸命満たそうとします。お金、地位、学歴、名声、権力、外見など目に見えるもの、自分が見て確かだと思うもので人生を満たそうと試みるのです。しかし人間の欲望は底知れないので、一つを手に入れてその空洞に入れてみますが、まだまだ満たされないのです。私も自分探しの旅で、世界中を旅して努力して探してみましたが、虚しさが付きまとうだけでした。「伝道者の書」を書いたとされているソロモン王は地位も名誉も財産も土地も全て手に入るものは所有していましたが、「伝道者は言う、空の空、空の空、いっさいは空である。日の下で人が労するすべての労苦は、その身になんの益があるか。」（伝道の書1:2－3）と言いました。もし神と共に歩まない人生ならどこまで行っても満たされません。空の空なのです。
ですから「霊的な飢え渇き」が必要で、「私の魂は渇いています。」と認め神様の前に出て行く必要があります。イエス様の時代のユダヤ人は、サマリア人と言葉を交わしたり触れ合うことは死体に触れて汚れることと同じことを意味しました（民数記19:11）。ましてや女性に知らない男性から声をかけられるなどありえないことでした。しかし、ヨハネ４章に登場するサマリヤの女性にイエス様は「水を飲ませて下さい」（ヨハネ4:7）と申し出たのです。イエス様にとってはこの女性がサマリヤ人だとか、女性だからとかどんな身分なのかは関係ありませんでした。イエス様はこの女性の心と魂が渇いていることを見たのです。
【人生の給水ポイント】
お正月は箱根駅伝が行われますが、選手は走りながら給水ポイントでちゃんと飲み物を手にすることができるかが大切です。もし給水ができないと次の給水ポイントまで走り抜くことさえ危うくなります。私たちも人生のレースを走りきるために、体と心と魂に水が必要ではないでしょうか。イエス様は人生の給水ポイントでいつも待っておられます。
サマリアの女性は、繰り返し結婚に失敗した女性でした。５人の夫があり、もはや普通の女性とは見なされませんでした。だからこそ人目を避け、誰も出歩かない正午の暑い時間に約1.2キロの距離を歩いて井戸に水汲みに来ていたのです。イエス様は女性と対話を続け、「もしあなたが神の賜物のことを知り、また、『水を飲ませてくれ』と言った者が、だれであるか知っていたならば、あなたの方から願い出て、その人から生ける水をもらったことであろう」（ヨハネ4:10）とおっしゃいました。
女性はイエス様が与えてくださる水が何なのかを悟っていませんでしたが、心を開いて「主よ、わたしがかわくことがなく、また、ここにくみにこなくてもよいように、その水をわたしに下さい」(15)と求めました。たとえ理解できなくても御言葉を信じて求めるとき、渇きが満たされる水が与えられるのです。
【神の最高傑作品から流れ出るもの】
水野源三さんというクリスチャンの詩人がいます。新聖歌292番「もしも私が苦しまなかったら」の作詞者です。
「♪もしも私が苦しまなかったら
新聖歌292番「もしも私が苦しまなかったら」
神様の愛を知らなかった。
もしも私が苦しまなかったら
神様の愛は伝えられなかった。
もしも主イエスが苦しまなかったら
神様の愛は現れなかった♪」
９歳で赤痢にかかり高熱を出し、脳性麻痺になってしまい目と耳の機能以外を全て失ってしまいました。もちろん話すことも書くこともできません。目さえも閉じてしまったそうです。しかし母親諦めずに意思疎通を図ろうとし、五十音表を指で指し示すと、瞬きで応答するようになりました。１２歳の時、町の牧師が置いていった聖書を母親にページをめくってもらい読み、クリスチャンとなります。１８歳から詩を書き始め、４７歳で天に召されるまで「瞬きの詩人」と呼ばれるようになりました。体の機能のほとんどを失い、絶望的だった水野源三さんの心と魂に神様が触れてくださり、水野さんを通してたくさんの素晴らしい詩の作品が世に送り出されました。その詩に感動し、励まされた人も少なくないのではないでしょうか。
私たちは皆、「神様の最高傑作品」として創られました。たとえ、「自分は何も特別なことはできない、欠けたひびと穴だらけの器だ」と思っていても、神の手に委ねられるなら、そのひびと穴から、神様のいのちの豊かな水が流れ出す器になります。イエス様が十字架に架かり、血を流しボロボロの体となりました。しかしその流された血で私たちは癒されたのです（イザヤ53章）。
池に石を投げると石が落ちた中心から波紋が周りに拡がってゆきます。一人の人が創り主である神と出会い、いのちの水を飲み、内側から真に作り変えられていく時に、周りの家族、親族の祝福となり、教会全体の祝福とつながっていきます。また、教会が祝される時に、日本全体の祝福となり、その影響は更に周りに及んでいくことだと信じています。
私自身も今まで多くの人に祈られ、教会に祈られ、支えられて生かされてきました。枯れた骨だった私が、今は神様のお手伝いをさせていただく番となりました。神様の御心はすべての人が生かされることです。また生かしてくださるのは神様です。霊の目が開けると分からなかった事が分かるようになり、また今は分からなくても後から分かるようになり、困難と思えていたことがいつのまにか祝福へと変わっていきます。それは神様による内的変革です。神様があなたを生かしたいと一番思っていらっしゃるはずです。
「おおよそこの川の流れる所では、…すべてのものが生きている。…枯れず、…絶えず、…その水が聖所から流れ出るからである。」（47:9、12）
【いのちの水が豊かに】
本当の意味で生かされるということは、イエス・キリストが神様であることを悟ることです。もはや自分中心、自己中心ではなく、キリストが心の中心にいてくださり揺り動かされても、中心がしっかりしているのですぐに焦点がキリストに合うこととなります。現代は、規準がそれぞれの人の中にあり、その規準が各々異なっているために摩擦が生じ、問題が起こるのだと思います。今の世の中がなぜ、こんなにも歪んだ精神構造でなりたっているのか、それは罪の結果です。法律を犯す罪も罪ですが、私たちの心の中で起こる、誰も見えないつぶやき、不平不満、ねたみ、嫉妬、傲慢、自己中心的わがまま、うそ、裁くことなど目に見えないこれらの暗い心の部分こそ、蓄積しますと、表面に出てくるくらいに成長してきます。
「善人は良い心の倉から良い物を取り出し、悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。心からあふれ出ることを、口が語るものである。」（ルカ６:４５）
今、私たちの心を占めている思いは何でしょうか。新しく出発するのに必要なことは、「罪からの解放」です。罪が熟して死を生むと聖書に書いてあります（ヤコブ１:１５）。神様が喜ぶ心は、「悔い砕かれたやわらかい心」です。もう２０００年以上も前にすでにイエス様がすべての人々の代わりに罪を負い、十字架ですべての罪と一緒に死に、そして神様の子である故に死からの復活をされました。この復活の命に日々新たに生かされ続ける時に、聖い聖霊に満たされ、満たされたものは溢れ、流れていきます。
生き返るべき他の悲痛なる魂の叫びは聞こえてこないでしょうか。どなたかの祈りが声かけとなり、苦しみの場が勝利の場となることができますように。祈りを通してどなたかの魂を神様に一人、また一人と糸を紡ぐようにつなげて行きたいと思います。２０２３年も主イエス様のいのちの水に満たされ、良いものを流す者でありたちと思い明日。元旦礼拝のこの朝、主の聖霊の息吹を吹き込まれて新たにここから共に立ち上がりましょう。皆様の祝福をお祈りいたします。
